Diary&Column/おさる式茶藝館

2006年10月30日

「鳳凰は二度鳴く」...伝説の鳥とアジアの歌姫

北斎の《鳳凰図屏風》を、江戸東京博物館で開催中の『肉筆浮世絵展 江戸の誘惑』展で見た。
圧倒されるような鮮やかな羽根の色がこの上もなく華麗なのに静かな印象がするのは、
理知的な瞳ゆえなのか。堂々としたその姿は正に王の風格である。
この絵は初めて見たけれど、なんだか懐かしくて暫く見入ってしまった。
ちるりるり、せーつせつ、るりららら、そーくそく。
Sachiyoさんの歌う『鳳凰』が脳内BGMで流れてくる。
そんな風に、鳳凰の鳴く声が確かに聞こえた気がした。

最近、ロウラーにはお馴染みのアジアの歌姫・sachiyoさんのニューアルバム『Rojak』にヤラれている。
Sachiyoさんの声には稟とした透明感と蒼穹にまで伸びていくかのようなゆるぎなさがある。
美しく気持ちの良いメロディラインに乗せられた言葉が、
予想外に生真面目だったりポジティブだったりするのが興味深い。
しかもその言葉の発し方が日本語なのに外国語のような不思議なひっかかりがあって、
心地よく残ったひっかかりのカケラが忘れ難い。
リラックスして聴くことができるのに、アタマのどこかが覚醒していく感じ。
“癒される”に似ているけれど、それと同時に深いところから揺さぶられる感じ。
なんとも得難い魅力に満ちた、いろんな意味で繊細ででかいアルバムであることよ。

『Rjojak』に収録されているくだんの『鳳凰』の詞は、実は不肖わたくしが書かせて頂いた。
2004年のROUROU秋冬コレクション用に書き下ろしたもので、その時のテーマが“鳳凰”。
ほぅ...駄洒落とも受け取れてしまうであろう呟きが思わずもれてしまいそうだった。
鳳凰っすか。鳥っすか。一体どんな服を作るとですか。
全くイメージが湧かないままにボスからコンセプト諸々についてお話を伺い、鳳凰とは何か、
何を象徴しているのかなどなんとなくは飲み込めたものの、普通にムツカシイ。
越えねばならんハードルを自ら嬉々として上げずにはいられないROUROUさんの、
ややドMちゃん的気合の入ったチャレンジャー精神を尊敬しつつ、ひたすら考えた。
なんだかんだで鳳凰漬けで夜明けを迎えてしまったそんなある日、
うっすらと白む空を見ていると、そこに鳳凰が飛んできた(気がした)。
ちるりるり、せーつせつ、るりららら、そーくそく。
やっと会えたね...。辻か、と突っ込む間もなく、その姿を私は目に焼き付けた。
忘れないうちに、急いで書き留めた。そうして無事テキストは出来上がったのである。

この時のショーでゲスト出演されたsachiyoさんが、テキストに曲をつけてくださり誕生した『鳳凰』。
ショーでは勿論、その後も折にふれてはライブでも歌って下さっていたそうです。
初めて聴いた時、正直あの詞によくぞかようなスバラシきメロディを...とプロの力量に心底驚いた。
素人(私ね)が作ったものだし、歌として書いたわけでもないから、さぞかし歌い辛かったことでしょう。
しかしそんな詞の欠点を補って余りある、壮大でドラマチックな歌にして下さり、
更に魅惑的なボイスで歌い上げて頂き、おさる感激。
今回アルバムに収録されたことは一生の思い出になりました。
こんな経験をさせて下さって、sachiyoさん、そしてチャレンジャーなROUROUさんにも有難う。
鳳凰の詞はともかく、sachiyoさんのアルバムはしみじみ素敵な一枚でありますので、
ぜし聴いてみて頂きたいです。