Diary&Column/おさる式茶藝館

2005年07月13日

「ルル」...不機嫌なおさると秘密の部屋

ろくに仕事も出来ないくせして態度だけは一人前な同僚を相手に
ほとほと疲れる毎日を過ごす私は、相当意地の悪い女になっていた。
一撃必殺であるはずの我が毒舌も、
考え方のステージが全く違う奴の前では何の役にも立たない。
不発弾でもそれを放つ際のエネルギーで自分だけが消耗し、
逆に変な方向から訳のわからん攻撃をされて
あやうくこっちが死ぬとこだった的な事態に陥るのが常だった。
一番イヤなのは、年中眉間に皺をよせてイライラしている自分だ。
奴の為に鬱々と過すなんてバカみたいとアタマではわかっちゃいても、
気がつくと世にも不機嫌な顔をしているわけで。

そんな私をどこかで見ていたのだろうか、友人の一人である可愛い女子が
ナイスなタイミングで、会いませんかと連絡をくれた。
良い意味でのびのび育ってきたんだろうなあと思わせる自由奔放さと、
それが我儘にはならない品の良さを兼ね備えた彼女は
どこか浮世離れした感じがユーモラスで目が離せない存在だ。
時間の流れすらもゆったりと変えてしまう様なソフトな物腰に、
あまり好きな言葉ではないがつい“癒されて”しまうこともしばしば。
だから彼女と会うのはいつだって嬉しい。

お気に入りの場所があるの、とだいじな秘密を打ち明けるように言って
彼女が連れて行ってくれたのは横浜中華街。
賑やかで怪しく生命力に溢れる街の片隅に、その店はあった。
“お姫様のアジア服“というのがコンセプトなんです、と説明しながら
勝手知ったる様子で先を行く彼女にくっついて階段を上がると、そこは!
か、かわいい……
思わず平仮名で呟いてしまう、えもいわれぬ空間でございました。
ピンクとパープルが基調の凝った壁紙はゴージャス且つキュート、
大袈裟過ぎないシャンデリアと趣味の良い調度品がしっくりきている。
くるくるとした形の手すりも愛らしく、
壁や窓に書かれた不思議な文字らしきものも面白い。
並んでいる服ときたら色んな国のエッセンスでキラキラしていて、
遠いような近いようなアジアの香りと色彩に胸がいっぱいになる。
嗚呼世界はこんなにも美しかったのね!
ちっちゃい闘争、果てしない苛立ち、数々の暴言、
そんな事を端から忘れてどんどん楽しくなってくる。

刺繍の綺麗なワンピースを試着させてもらおうと、試着室を見てまた呟く。
か、かわいい……
住みつきたくなるような心地良さだけど格調高くって、
本当にお姫様の部屋みたいだね、と感想を述べたら
彼女は気取ったポーズでスカートを摘みあげ、すまして言う。
「わたくしのお部屋へようこそ」
そうしていたずらっ子のように笑ってみせた彼女・ルルのかんばせは、
やんごとなき姫君に他ならない、誇り高さと美しさに満ちたものであるなあと
今更ながら気付いた私なのでした。

この物語はおおよそフィクションです。